「リモコン症候群」泉麻人著

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“花の色は 移りにけりな いたづらに 我が身 世に経る 眺めせし間に”

こんなblogを企てると、20年近く前に新刊で読んでそのまま本棚に放り込んだ文庫本を時空を超えて読み返すハメに陥るワケで、ある程度は予想したことながら、この作品のように時代性を濃厚に反映させたものについては、その間の世相の事物の変容を実感してしまう。

「カフェバー」「ハマトラ」「カルチャークラブ」

昭和末期のガジェットみたいな用語が頻発するのがメランコリック。

しかも自分的にはこの作品を読んだ時点ではまだ身分が学生で、あと何年か経てばこんな世界に自分も浸るのかと“ぼんやりとした不安”を抱えたにもかかわらず、じっさいにはそんなガジェットとは縁遠く、どちらかと云えばプロレタリアートぽくしかも変態性を加味した不気味な20代を過ごしたことがメランコリック。

当然のようにこの本は絶版ですが、昭和末期に若者(^^)だった人がちょっと舐めてみるのは楽しいんではないかと思います。

以下ダラダラと、っていうかもうここまでもじゅうぶんダラダラなのにさらにダラダラと。

著者は当時は時代を活写するコラムニストとしてスキゾキッズ(説明省略)の代表みたく流行りモノ扱いされていたものですが平成16年現在もマスな世界で或る年代の代表的コメンテーターとしてご健在な様子(ファンサイト)なのは立派なものです。

作品中に世相を反映したガジェットが氾濫しているとは云っても、現在某県知事を務めてらっさる某氏の『なんとなく、クリスタル』のような、ガジェットやダルなエモーションによる時代の切り取りを図った、比喩的に額縁の如き小説とは異なり、この作品は、努力・友情・勝利3点セット的な価値観から、欲望が飽和した挙句に中和して、他者との交流に動物的欲望を抜いてしまった大脳皮質(=電脳)優先の現在へ橋渡しを行なう、バーチャルな価値観の具現化の嚆矢として読めると思います。

当時は携帯電話もインターネットもなかったんだよなあ。

まだ書くか。

知事と云えば、現在某都知事を務めてらっさる某氏の国粋的な思考様式にはまったくもって共感できないが、その氏の小説作品や評論(三島由紀夫氏に対するコメントとか)はリアリスティックかつフィジカル&パセティックでとても面白い。肉体言語という感じカナ?「秘祭」なんてサイコーです。こんど図書館で借りてこよう。

まとめ:
けっきょく、小説を読むと云う衝動的な行為は、己の肉体感覚と大脳皮質感覚の差異を埋め合わせる行為なんだと思う。自分の感覚だけではその差異を埋めることができないから他者(=著者)の表現を自分の中に取り込む必要があると云う。その点だけ捉えれば、宗教の方がお手軽かつ即効性が有ると思われるが。宗教は別の側面からは事業だからねえ。

(昭和63年、文春文庫)

この記事へのコメント

大田原牛
2004年09月17日 23:22
他が難しそうなので、ここにコメント。
「23区物語」とか「ナウの仕組」とか「けっこうすごい人」とか読みました。
当時は雑誌で渡辺和博や景山民夫(カミングアウト前)などと共に、当世風俗にアレコレうんちくを言っていたように思います。
DRAGON龍
2004年09月20日 23:50
コメントありがとうございます。
渡辺氏や景山氏は当世風俗にコメントするに加えて創造的な資質があったぶん当人たちが時流に呑まれてしまった傾向があるかもしれません。泉氏は時流に対して無色である分、その時々の企画に調和しやすいのかも、です。一般的にはアド街とか、ゲーマー(わたしだ)には東京バス案内、とか。
人生たかだか80年ながら、ずっと食っていける安定的な稼ぎが難しいのは、泉氏のみならず、以前同じ会社で勤めていて辞めてしまった大田原牛さんとわたくしにも云えることですね。

苦いオチだな!
大田原牛
2004年09月21日 20:13
そっちは資格持ちのセンセイじゃあぁあ~りませんかっ。戯れは勘弁してください。

泉麻人は語りの上で現在と過去明確に分けていた気がします。
現在については断定的な表現はしない(ような気がします)。
景山民夫は「直木賞欲しい」「アメックスのプラチナ欲しい」「田舎モンは東京から出て行け」と現在から未来について積極的に発言していたため、危なっかしかったです。
DRAGON龍
2004年09月23日 22:41
再コメントありがとうございます。

時流に寄り添って糊口をしのぐ(←“虎口からの脱出”と掛けてます(^^ゞ)方法は、トップギアに乗るか、ニュートラルギアに入れるか、二択と思います。泉麻人さんや、自分がずっと注目してる糸井重里さんは、分類すれば後者でしょう。

ただこの二択は「人生は長い」ことが前提で、飛び道具として、中島らもさんのように、人生を短くしてしまう、という最終兵器があります。合掌。(←むかし、かねてつの広告コピーを書いてらした頃のキメ文句だったのです)

蛇足、教員免状なら持ってますが、アレ、なんの役にも立ちませんよ。大型二種のがよほど。
大田原牛
2004年09月25日 00:01
ほぼ日刊イトイ、ですね。
遠くない所に事務所があって、たまに前を通ります。
「ここであんな楽しそうなことやってるのかぁ」といつも思います。
「なんか、勝手に入り込んでも怒られなさそうな気がするなぁ、でもやっぱり怒られるだろう、それにしても改めて何か言いたいことがあるわけでもないし」
とダラダラ考えながら通り過ぎます。

中島らも原作の映画「お父さんのバックドロップ」楽しみです。
原作はジーンとしました。
頭の中では「お父さん」はレ・バンナに勝った安田忠夫です。
DRAGON龍
2004年09月26日 22:45
再々コメントありがとうございます。

ほぼ日刊イトイ新聞:http://www.1101.com/index0.html
は糸井さんのわりと最近の仕事で、自分にとっては“ヘンタイよいこ新聞”が思いで深いです。
傍から見てるととても楽しそうで、また、そういう楽しそうな雰囲気を醸し出すことがひとつの達成なんでしょうけど、じっさいのとこ、クリエイティブな成果でカネを稼ぐことを続けるのは大変だと思います。ある意味、ギャグ漫画をずっと描き続けるのと似たような。

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